著者
小野寺 博義 町田 紀子 松井 昭義 小野 博美 阿部 寿恵 渋谷 大助 南 優子 岩崎 隆雄
出版者
Japan Society of Ningen Dock
雑誌
人間ドック = Ningen dock : official journal of the Japanese Society of Human Dry Dock (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.488-493, 2005-09-30
被引用文献数
1

目的:超音波検査による脂肪肝の頻度が一般のがん・生活習慣病健診受診者(A群)よりも有意に高いある職域(K群)において,生活習慣や交代制勤務と脂肪肝の関係を検討した.方法:K群の40歳から60歳の2,323人,およびA群の40歳から60歳の2,010人に生活習慣,勤務体制,摂取食品についてのアンケート調査を実施し,回答を得たK群の2,322人,A群の2,008人を対象とした.結果はロジスティックモデルを用いて解析した.結果:飲酒する人,運動する人,喫煙者では脂肪肝の頻度が有意に低率であった.K群男性では更に不規則な食事が脂肪肝のリスクを高める有意な要因であった.A群での食品別の解析では野菜,海藻,砂糖入り飲料の摂取が多い人では脂肪肝頻度が低く,肉の摂取は脂肪肝のリスクを高くする要因であった.これに対してK群では脂肪肝の有意なリスク要因となる食品がなかった.結論:K群においては食生活習慣異常が脂肪肝頻度高値の重要な要因になっていると考えられた.K群は交代勤務が多く,不規則な仕事内容の職域集団であることから食事が不規則になると思われ,食事のあり方を職場全体で検討し見直していく必要があると考えられた.
著者
伊藤 一人
出版者
Japan Society of Ningen Dock
雑誌
人間ドック = Ningen dock : official journal of the Japanese Society of Human Dry Dock (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.7-16, 2012-06-30
参考文献数
40
被引用文献数
1

我が国の前立腺特異抗原(PSA)を用いた前立腺がん検診の普及率は低く,現在も多くの臨床的に重要ながんが進行するまで見逃されている.また,前立腺がん死亡数は増加し続けており,2010年は11,600人と推計され,2025年には15,700人に増加すると予測され,最も効果が期待できる対策を早急に講じるべきである.<br> 前立腺がん検診は無作為化比較対照試験で死亡率低下効果が得られることが証明されており,日本泌尿器科学会は前立腺がん検診ガイドラインにおいて,「前立腺がん死亡率を低下させるPSA検診を推奨する」との指針を示した.一方で,検診受診から治療までの過程で不利益を被る場合もあり,検診の受診による利益と不利益を正しく住民に啓発したうえで,受診希望者に対して最適な前立腺がん検診システムを提供することをガイドラインに明記している.<br> 死亡率低下効果が証明されたPSA検診は,日本泌尿器科学会のガイドラインに沿って,日本の主な受診機会である住民検診および人間ドックなどで正しく普及させることで,前立腺がん死亡率の低下が期待できる.
著者
細野 安希恵 清水 正雄 足立 雅樹
出版者
Japan Society of Ningen Dock
雑誌
人間ドック = Ningen dock : official journal of the Japanese Society of Human Dry Dock (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.537-540, 2010-09-30

<b>目的:</b>男性受診者の混在する健診において,女性受診者がより安心して検査に集中できる環境作りの一つとして健診ブラの導入を検討したので報告する.<br><b>方法:</b>対象は平成20年12月1日より平成21年2月20日までに当センターを受診した女性受診者595名.健診ブラ使用にあたっては実施の旨を説明した文書を事前に郵送.使用希望者に対して使用経験についてのアンケート記入を条件に無料配布した.同時に医師・診療放射線技師による胸部エックス線画像への影響も検討した.<br><b>結果:</b>健診ブラのサイズ・着心地に対する印象は概ね良好であった.しかし,健診ブラに対する認知度・購入意欲は低いことが顕著であった.また,胸部エックス線画像に若干の歪みが認められた.<br><b>結論:</b>健診ブラの使用は女性受診者のサービス向上として有用である.健診ブラを着用することで安心感が増した受診が可能となり,レディースドックの代替案の一つとして期待される.一方,着衣枚数の増加から脱衣を必要とする検査では着脱に時間がかかった.受診者の購入意識が低いため,導入時にはコストパフォーマンスが問題になると予想される.胸部エックス線画像の読影への影響はほとんどなかった.<br>
著者
河邊 博史 和井内 由充子 齊藤 郁夫
出版者
Japan Society of Ningen Dock
雑誌
人間ドック = Ningen dock : official journal of the Japanese Society of Human Dry Dock (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.655-661, 2005-12-26

目的・方法:心不全の診断,治療効果判定,予後推定に有用な指標である血漿B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)濃度を,健康診断受診者194人(男性142人,女性52人,平均年齢50歳)を対象に1999年度2003年度に測定し,その経年変化を観察した.また,その変化と心血管病易発症状態として注目されているメタボリックシンドローム関連因子(body mass index:BMI,脂質,血糖血圧)の関係について検討した.結果:両年度の血漿BNP濃度の相関係数は0.588で,両年度とも40pg/ml以上(心疾患発見のカットオフ値)の症例が4例,2003年度に40pg/ml以上に悪化した症例が10例見られた.これらの症例のうち,男性ではメタボリックシンドローム関連因子の集積が見られたが,女性には見られなかった.また,両年度とも正常値(18.4pg/ml以下)を超えていた男性13人では,両年度とも正常値であった男性100人に比べて2003年度の高血圧の頻度が高く,メタボリックシンドローム関連因子を1つ以上有する率も有意に高かった.しかし,女性では同様のことが認められなかった.結論:以上より,血漿BNP濃度の経年変化とメタボリックシンドローム関連因子の集積の関係には男女差が認められ,男性では両者の関係が認められたが女性では明らかでなかった.
著者
Naoyuki Okamoto
出版者
Japan Society of Ningen Dock
雑誌
人間ドック = Ningen dock : official journal of the Japanese Society of Human Dry Dock (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.26, no.6, pp.911-922, 2012-03-31
被引用文献数
1

Amino acids play a central role in many biological activities. Several recent studies have reported that plasma amino acids can be used as biomarkers to assess disease risk or progression, or to select proper treatment. This review summarizes recent clinical research using a novel approach of multivariate analysis called "AminoIndex Technology", which is based on plasma amino acids profile for cancer screening. A multicenter study was conducted to explore and validate the application of "AminoIndex Technology" to cancer screening for gastric, lung, colorectal, prostate, and breast cancers. AminoIndex<sub>®</sub> Cancer Screening (AICS) scoring involves evaluating cancer based on amino acid concentrations using 5 types of AICS values. AICS enables simultaneous testing for multiple cancers regardless of cancer or tissue type. Furthermore, because AICS can detect stage II (stage B) or earlier cancers and can easily be performed on a plasma sample, it can be conducted in conjunction with comprehensive medical examinations or regular health check-ups. It is expected that "AminoIndex Technology" will be applied to cancer screening and various other areas of clinical utility.
著者
三浦 猛 岡本 直幸 今泉 明 山本 浩史 村松 孝彦 山門 實 宮城 洋平
出版者
Japan Society of Ningen Dock
雑誌
人間ドック = Ningen dock : official journal of the Japanese Society of Human Dry Dock (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.51-55, 2011-06-30
被引用文献数
3

<b>目的:</b>血漿中アミノ酸濃度は,生理学的な代謝状態を反映することが知られており,肝臓機能障害時や種々のがんで血漿中アミノ酸濃度が変化することが示唆されている.前立腺がんの早期発見,治療につながる新しい診断マーカーの開発を目的とし,前立腺がん患者と対照者との血漿中アミノ酸濃度の比較に基づき,アミノ酸を変数とした多変量解析により作成した判別式「アミノインデックス」による前立腺がん判別の可能性を検討した.<br><b>方法:</b>前立腺がん患者と対照として人間ドック受診者の血漿中アミノ酸濃度を測定した.患者群と対照群とのアミノ酸濃度を比較し,個々のアミノ酸濃度変化を,変数選択を伴う多重ロジスティック回帰により,前立腺がん患者を判別する判別式「アミノインデックス」を導出,前立腺がんの診断能の評価を行った.判別能の評価基準としては,ROC曲線下面積(ROC_AUC)を採用した.<br><b>結果:</b>対照群と比較し,前立腺がん患者は,Alanine, Histidine,Asparagine, Prolineの増加,Triptophanの減少が見られた.導出された前立腺がんを判別する「アミノインデックス」は,ROC_AUC=0.74の判別能を有し,早期がんも検出できた.またPSAとは有意な相関は見られなかった.<br><b>結論:</b>前立腺がんを判別する「アミノインデックス」は,前立腺がんの新しい診断マーカーとなる可能性が示された.また,PSAと独立した指標であることから,PSAとの併用による有用性が示唆された.